ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作『アル中女の肖像』を見た。 見た目にふさわしい洗練された大人の振る舞いをし続ければ社会に丁重にもてなされる側の美しく装った彼女「アル中女」は、あらゆる場所で呑んだくれては、社会のつまはじき者扱いを受け…
メーサーロシュ・マールタ監督特集『ふたりの女、ひとつの宿命』『マリとユリ』 『ふたりの女、ひとつの宿命』だけ見逃す可能性が高く、しかし先の3本を見終えた段階でやはりどうしても見たい、と無理やりねじ込みスタンプラリー(架空)完了しました。結果…
メーサーロシュ・マールタ監督特集『アダプション/ある母と娘の記録』『ナイン・マンス』を見た。 2作とも、婚姻関係にある男女のみが子どもを持つべきと考えている男たちと、子どもを持つうえで婚姻関係は必須ではないと考えている女たちのすれ違いの描写が…
「あたし、年取らないことに決めてますから」/小津安二郎監督「東京物語」 ひとつの家族が畳まれてゆく姿を通して、戦後の時代の終焉に向かう価値観が示された映画と思って見た。 自分もこのように親に期待されているのだとしたら苦しいが、期待に応えたい…
「Hey, you bastards! I’m still here!」(ちくしょう)あたしはまだ生きてるんだ。伊藤比呂美『道行きや』 www.shinchosha.co.jp カリフォルニアから日本に帰国して、早稲田と熊本を行き来している伊藤さんの、連載エッセイと書き下ろしエッセイをまとめ…
「現実八割幻想二割」『MONKEY』 vol.23 特集 ここにいいものがある。 www.switch-store.net 「岸本佐知子+柴田元幸短篇競訳」と聞いたら、岸本さんの翻訳文学行商人としての手腕に魅入られている人間として読まねばと思う。だいたいいつも買ったあとめちゃ…
「よく聞きなさい、秀雪。あたしは、今、あなたのそばにいてあげられない。でも、かのじょは片時もあなたから離れることはないわ」 温又柔『魯肉飯のさえずり』 www.chuko.co.jp 母と娘、台湾をルーツとし、日本に住む二人の主人公視点の章が交互に展開され…
「アポカリプスは俺にとっちゃ友達だ。俺はアポカリプスを感じるし、俺たちは隣り合って育った……。」/エドゥアルド・ヴェルキン『サハリン島』 www.kawade.co.jp 『サハリン島』を読みながら『鯨』(チョン・ミョングァン)のことを思い出したのは、私に暴…
「私たちは宇宙に存在する孤独の総量をどんどん増やしていくだけなんじゃないのか」/キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』 www.hayakawa-online.co.jp SFを読むときに求めているものについて考える。 その少し未来の物語が、過去の誰かが…
男の傍らの女たち / インゲ・シュテファン『才女の運命』 filmart.co.jp 天才と賞賛されてきたさまざまな男性たちの影で才能を搾取されてきた女性たちの人生を掘り起こす本なのだけど、なんだか読んでいてひたすらに落ち込んでしまった……それぞれの人物毎に…
J・M・クッツェー『鉄の時代』 www.kawade.co.jp 翻訳家のくぼたのぞみさんの名前をアディーチェの作品で知り、サンドラ・シスネロス『サンアントニオの青い月』『マンゴー通り、ときどきさよなら』の文章に強く惹かれてから、いつか同じ方が訳したクッツ…
カルメン・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』を読んだ。 etcbooks.co.jp 「女の体」アンソロジーなのかな?と思うほど、印象ががらりと変わる短編群すべて同じ作者であることに驚く。題材から心の距離を近づけて読みたくなりがちだけど、そんな心…
松田青子『持続可能な魂の利用』 www.chuko.co.jp この作品もディストピアSFといっていいんだろうか? 基本設定めちゃくちゃ現代日本ですが。 恒常的な息のしづらさを当たり前と思っていないとこの国ではやっていけないと思いこんでいたけど、でもそれってな…
『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトヘ』を読んだ。 http://www.daifukushorin.com/book.html 「女の子写真」は当人らを無視し、他者によって貼られたラベルだった。新たな女性写真家の台頭に脅威を感じた男性らが、おのれの持つ発言…